研究概要 |
ナス(Solanum melongena L.)は主要品種の多くが一代雑種であるので,雄性不稔の利用は品種育成に多大な貢献をするものと考えられるが,これまでに実用的なナスの雄性不稔系統は見出されていない.本研究では,細胞融合法を用いて近縁野生種の細胞質を栽培ナスに導入することによってナス細胞質雄性不稔系統を育成することを目的としている.本年度(平成10年度)では,1)ナスと近縁野生種との間の細胞融合を試みるとともに,2)細胞質雑種の細胞質ゲノム同定のためのミトコンドリアDNA(mtDNA)の分析法の確立を試みた. 1. 近縁野生種Solanum gilo Raddi.とナス栽培品種‘Uttara'との細胞融合を行った結果,再分化個体を得ることに成功した.得られた再分化個体についてアイソザイム分析による雑種性の検定を行った結果,すべてS.giloと同一のパターンを示し,これらが体細胞雑種ではないことが明らかとなったが,以上の実験で,少なくともプロトプラストからの植物体再分化の手法が確立されたといえる.融合条件等については,今後,検討が必要であると思われる. 2. ナス栽培品種‘Uttara'および‘長崎長'ならびに近縁野生種6種について,制限酵素BamH I,EcoR I,EcoR VまたはHind IIIならびにプローブとしてイネのmtDNAの遺伝子atp A,cox Iおよびrpl2の各領域を含むDNA断片を用いてRFLP分析を行った.その結果,ナス栽培品種はともに近縁野生種との間で,制限酵素とプローブの12組合せのいずれかを用いた分析で多型が検出できた.従って,本分析がmtDNAの分析法として有効であることがわかり,mtDNAの分析による細胞質ゲノム同定法が確立できた.
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