本10年度は、西南日本において3回にわたって現地調査を実施し、非休眠性ハナカメムシ類を探索した結果、以下のような実績を得た。尚、一部のデータは、別紙記載の出版物に公表済みである。 1. 紀伊半島南部における探索調査(6月上旬):本調査は和歌山県農業試験場、田辺市及び上富田町農業協同組合等の協力を得、田辺市から古座川町にかけての太平洋沿岸地域において採集調査を行った。主に露地栽培の野菜と河川敷等の乾性草地でネットスウィーピングを実施したところ、約200個体のヒメハナカメムシ類を得た。これらを同定した結果、南方系のタイリクヒメハナカメムシが60%以上を占めていることが判明した。本種は、冬期の休眠性が低く、天敵資材としての利用価値は高い。 2. 四国太平洋岸地域における探索調査(10月下旬〜11月上旬):この時期は秋が深まり、多くのハナカメムシが休眠に入る。調査は高知県農技センターの協力を得た上、南国市と周辺町村で実施した。調査サイトは1と同様であるが、センターの施設栽培ナスも調査した。その結果、採集された約150個体のハナカメムシのうち、95%以上がタイリクヒメハナカメムシで、この地域においても冬期施設栽培における重要天敵であることが示唆された。 3. 沖縄県における探索調査(3月上旬):本調畳は、沖縄県農試と農水省国際農業研究センターの協力を得て実施した。この時期、日本本土の野外では、殆どのハナカメムシが休眠しているが、クロヒメハナカメムシ(168個体)、ミナミヒメハナカメムシ(32個体)、タイリクヒメハナカメムシ(3個体)、ヒメダルマハナカメムシ(252個体)が採集された。これらは、暖房が施されていれば、日本本土の施設でも利用できると考えられる。
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