研究概要 |
キュウリモザイクウイルス黄斑系統感染タバコ(Nicotiana tabacum cv.Ky57)葉におけるウイルス蓄積量の多いモザイク葉黄色部とウイルス蓄積量の少ない緑色部について、ウイルスゲノムRNAの複製産物とその翻訳産物ならびに植物側の因子の量的変動を比較し、ウイルス罹病性植物でのウイルス増殖抑制反応について解析した。 モザイク病徴の発達過程を詳細に調べた結果、感染葉ははじめに葉全体が黄化する過程を経てから葉位によってはその葉脈周辺の組織から緑化することがわかった。ウイルス外被タンパク質(CP)を特異的かつ高感度に検出できる抗体を作製し、黄化後緑化する葉位と黄化後緑化しない葉位のCP蓄積量を検出したところ、経時的に同時に検出され増加したことから、緑化はCP検出時の葉の発達程度に依存することが判明した。また、このことは緑化の葉位並びにその程度をウイルス接種時の葉の生育程度によって予測することを可能にした。ウイルス複製産物のノザン分析を行ったところ、黄化する段階では4種のプラス鎖ウイルスRNA(1-4)に対するマイナス鎖RNAの蓄積がそれぞれ同調的に高くなり減少したが、緑色部発達葉の緑色部でCPをコードするRNA3と4のマイナス鎖だけは相対的に多い状態を維持した。よって緑色部におけるウイルス増殖抑制反応過程では、このマイナス鎖RNAの分解が阻害されるものと考えられ,その分解抑制を支配する因子の解明が急がれた。 一方、緑化前の段階で葉組織試料より全RNAを抽出しデイファレンシャルディスプレイ法を行ったところ、緑化すると予想できる試料において特異的に発現している植物側のmRNAのRT-PCR産物が得られた。このPCR産物について今後の詳細な解析はウイルス増殖抑制反応に関与する植物側の因子の同定に重要な知見を与えるものと考えられた。
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