ファイトアレキシン合成系遺伝子の構造と機能の解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10760028
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 吉岡 博文 名古屋大学, 農学部, 助手 (30240245)
• キーワード: ジャガイモ疫病菌 / ジャガイモ / HMGR / ファイトアレキシン / 防御遺伝子 / hmg3 / エリシター

研究概要

病原菌の攻撃を受けた植物細胞には様々な防御応答が誘導される。中でもファイトアレキシン蓄積が主役を演じていると考えられている。ナス科植物のファイトアレキシンの多くはテルペノイドである。ジャガイモ疫病では、非親和性菌が感染を試みると、セスキテルペノイドファイトアレキシンであるルビミシおよびリシチンが合成誘導される。しかしながら、これらの合成に関与する酵素については一部の遺伝子がクローニングされているにとどまっている。3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA還元酵素(HMGR)は3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA(HMG-CoA)からメバロン酸合成を触媒し、イソプレノイド合成経路において重要な役割を果たす。
ジャガイモにおけるHMGR遺伝子は、3クラスから成る多重遺伝子族を形成しており、hmg2およびhmg3はエリシター処理や病原菌接種により誘導されることが知られている。疫病菌菌体エリシター(HWC)およびアラキドン酸処理を施したジャガイモ塊茎より12時間後まで全RNAを抽出してノーザン解析したところ、HWC処理区において一過的なhmg2およびhmg3の転写誘導が認められた。さらに親和性菌、非親和性菌接種区においては、両者でmRNAの蓄積が観察された。しかしながら、翻訳途中にあるポリソームRNAを精製し、hmg2またはhmg3に特異的なプローブを用いてノーザン解析したところ、非親和性菌接種区においてのみmRNAの蓄積が確認された。したがって、hmg2およびhmg3は転写後調節によって制御されているものと思われる。hmg3ゲノムクローンの全塩基配列を決定した。hmg3ゲノムクローンは、3つのイントロンに分断される構造をもつ。推定プロモーター領域にはmybおよびP-box様配列が存在し、H-box様配列を2つ含む約300bpの繰り返し配列が認められた。翻訳開始コドンの5′側近傍には、ピリミジンに富む配列が見いだされた。

研究成果

• [文献書誌] Hae-Jun Park: "Physiological mechanisms of a sub-systemic oxidative burst triggered by elicitor-induced local oxidative burst in potato tuber slices." Plant Cell Physiology. 39. 1218-1225 (1998)
• [文献書誌] Gian Trepp: "NADH-glutamate synthase (GOGAT) in alfalfa root nodules : genetic regulation and cellular expression." Plant Physiology. in press.
• [文献書誌] Hirofumi Yoshida: "Aspartate aminotransferase in alfalfa nodules : Localization of mRNA during effective and ineffective nodules development and promoter analysis." Molecular Plant-Microbe Interactions. in press.
• [文献書誌] Daigo Takemoto: "Effect of cytochalasin D on defense of responses potato tuber discs treated with hyphal wall components of Psytophthora infestans." Plant Science. in press.
• [文献書誌] Noriyuki Doke: "Molecular genetics of Host-Specific Toxins in Plant Diseases" (Kohmoto, K.and Yoder, O.eds), Kluwer Academic Publisher, 11 (1998)