研究概要 |
森林生態系における土壌中の物質動態を定量的に明らかにするために北海道北部に位置する北海道大学農学部附属雨龍地方演習林内において湿性降下物、林外雨、林内雨、樹幹流、土壌浸透水(重力水、毛管水)および河川水の化学組成を観測している。バルク降下物のpHは4.2〜5.5の範囲にあり、湿性降下物のpH(4.8〜5.8)よりもやや低い値で推移した。また、河川水のpHは6.5〜7.5の範囲で安定して推移した。山頂のP-1地点では土壌厚が約40cmと小さく、表層土壌浸透水(10cm、45cm)のpHも4.0〜5.5と比較的低い値で推移していた。P-2地点では土壌層厚はP-1地点と比較して大きく、土壌溶液pHは表層(10cm)で4.8±0.3に対して深層(70cm)では5.5±0.3であり、深くなるにつれてpHが上昇する傾向にあった。土壌溶液の総イオン濃度は深くなるにつれて上昇する傾向にあった。陽イオンではNa^+濃度が最も高く、Mg^<2+>,Ca^<2+>,K^+,NH^<4+>の順であった。陰イオンではCl^-濃度が最も高く、Cl^->SO_42-≒Org^<n->>HCO_3≒NO_3^-の順であった。HCO_3およびNO_3-は他と比べて非常に小さい値を示した(図1)。土壌中の物質動態を定量的に評価するために土壌からの浸透水量の見積もりを行った。浸透水量の見積もりは水収支法を用い、実測の土壌水分率(TDR法)とペンマン法による可能蒸発散量から算出した。得られた水収支データとイオン組成を用いて土壌中の物質収支に基づいた解析を行った。土壌からの元素流出は大気降下物に由来するSO_4^<2->および系内部で生産された有機酸の影響を相互に強く受けていることが示唆された。
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