研究概要 |
コンポストから分離したトマト疫病菌(P.infestans)に対する拮抗微生物(60株の細菌と11株の糸状菌)の中から、抗菌作用の強い10株の細菌と2株の糸状菌を選抜した。 10株の細菌の培養液は強い抗菌活性を示し、クロマト分離等による抗菌活性の挙動から、抗菌作用は3つのタイプに分けられた。3株(MMB-13-2,-13-8,-15-4)は揮発成分に強い抗菌活性が認められ、培養液のpHを10にすると揮発成分の抗菌活性は非常に高くなり、その臭いからアンモニアと考えられた。また、pHを4にすることでも揮発成分の抗菌活性が少し高くなることから、低級脂肪酸の抗菌作用が示唆された。最も抗菌活性の強い細菌株(MMB-15-5)は、Bacillus属と同定し、その培養液中の抗菌物質は、Amberlite XAD-2に吸着され、MeOHで溶出され、次いで、MeOH-CHCl_3-H_20(65:30:5)によるシリカゲル力ラムクロマトグラフィーでよく分離された。TLC bioautographyの結果から、1種の抗菌物質の存在が示唆され、それはニンヒドリン陽性で、Rf値から、既にBacillus subtilisから単離されているiturinAと推定された。 2株の糸状菌(MMF-15-1,-15-2)の培養液中の抗菌物質は、酢酸エチルで抽出された。酢酸エチル抽出物中の代謝産物がTLCで一致したことから、この2株は同種の菌と考えられた。また、TLC bioautographyの結果から、少なくとも3種の抗菌物質の存在が示唆された。シリカゲル力ラムでMeOH-CHCl_3の溶媒系により数回分離し、3種の抗菌物質(A,B,C)を単離した。MSスペクトルにより、それぞれの分子量が338、352、354と判明した。NMRスペクトルから、いずれも芳香族の化合物で、同様の基本骨格を有すると推定されたが、構造の確定には、更に各種スペクトル、化学反応等による検討が必要である。
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