植物細胞壁に微生物由来のセルロース結合蛋白質(CBD)をアンカリングして、堅い細胞壁繊維質を分解しやすくしたり、CBDに抗菌蛋白質を融合したりして高機能化することを究極の目的として、CBDの性質検討と、植物細胞中での発現をおこなった。 1.クラゲ蛍光蛋白GFPにClostridium stercorarium xylanaseA由来のCBDを融合した遺伝子を構築した。さらに、これに植物由来の分泌シグナルをつけたものを作製した。これらを植物の発現ベクターに連結し、タバコ培養細胞BY-2へ導入した。形質転換体を選択して、蛍光顕微鏡で観察を行ったところ蛍光が観察されたが、それぞれの形質転換体での蛍光の様子は大きな差がみられなかった。そこで、形質転換体より無細胞抽出液を調整し、抗GFP抗体ウエスタンプロッティングを行ったところGFPのみを発現したものと同じところにバンドが検出された。このことは、植物細胞中でCBD部分が分解を受けたか、あるはCBDとGFPをつなぐリンカー部分で切断を受けていることを示唆している。 2.そこで、人工的融合蛋白質ではない、オリジナルなCBDが植物中で発現できるか調べるため、C.thermocellum xylanaseA遺伝子を植物用の形質転換ベクターに導入し、タバコ培養細胞に導入した。得られた形質転換体から、無細胞抽出液を調整し、ウエスタンブロッティングで酵素の発現を調べたところ、予想される分子量に反応するバンドが観察された。このことは植物細胞中でCBDを発現できることを示している。
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