システインスルフィン酸デスルフィナーゼIIの結晶化を行い、そのX線結晶構造解析を行なった。ネイティブ結晶、水銀誘導体結晶、白金誘導体結晶の回折強度データをそれぞれ収集し、分解能3.0Åで重原子同型置換法により位相を決定した。得られた位相情報で電子密度図を計算したが、主鎖をトレースするには不明瞭な部分があった。そこで、位相情報の改善をSolvent flipping法により行ない、さらに分解能を2.8Åまで徐々に上げて位相の拡張を行なった。改良された電子密度は、非対称単位中に1つの固まりとなっており、これが、結晶学的2回軸をはさんで会合した状態であることが判明した。つまり、この2つの固まりが本酵素のホモダイマー1分子に対応していると考えられた。各サブユニットの中心部にクレフトが存在し、補酵素であるピリドキサールリン酸分子が1つづつ結合しており、この部位が活性部位であると推定された。電子密度の連なりをスケルトン化してグラフィックスワークステーション上に表示し、これを参照しながら本蛋白質分子の主鎖のトレースを行なった。最終的に、406残基中404残基のアミノ酸残基を当てはめることに成功した。226番目のリジン残基がピリドキサールリン酸補酵素分子とシップ塩基を形成していることが分かった。各サブユニットは、N末端部分、小ドメイン、大ドメインの3つの部分から構成されていた。そして、他のピリドキサールリン酸依存酵素には見られない特徴的な2つのループ構造を本酵素が保持していることが判明した。
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