硫酸還元菌由来のフラボドキシン及びFMN結合タンパク質について、遺伝子工学・タンパク質工学などの手法を用いて研究した。まず、フラボドキシンについては、Desulfovibrio vulgaris(Miyazaki F)株から、その遺伝子をクローニングし、その塩基配列を決定した。塩基配列の解析により、この株由来のフラボドキシンのアミノ酸配列を初めて決定した。また、この遺伝子を大腸菌を用いた発現系により発現させた。発現させた組換え体フラボドキシンが、天然のものと同様の構造を持っていることを確認した。また、その物理化学的な性質、すなわち、その酸化還元電位やFMNとの解離定数を測定することにより、その特徴付けを行った。また、アミノ酸配列の比較から、FMN結合領域の近傍に存在していると考えられるものの、この株由来のフラボドキシンにのみ存在するアミノ酸残基を特定した。すなわち、16番目のアラニン残基をグルタミン酸残基に変異させた変異型フラボドキシンを遺伝子工学的に作成した。その性質を調べた結果、この位置のアミノ酸残基は、酸化還元電位やFMNとの解離定数にはそれほど影響はないことから、フラボドキシン分子の表面に存在する負電荷を持ったアミノ酸が酸化還元電位などに与える効果は、一般的でないことを示した。一方、FMN結合タンパク質については、その結晶構造を解析するため、結晶化と初期的な解析を行った。いくつかの結晶化条件を検討の後、構造解析に適した結晶化系を見いだしたので、得られた結晶の構造解析を行った。その結果、ユニットセル当たり2分子となっており、また、それらが相互作用をしていることが示唆できた。今年度は、詳細な構造解析を行い、高次構造と酸化還元電位やFMNとの解離定数などの機能との関係を明らかにしていく予定である。
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