研究概要 |
1. 我々のグループは、酵母Saccharomyces cerevisiaeが元々ポリガラクツロナーゼ産生能を有するにもかかわらず、ほとんどの株でホリガラクツロナーゼ遺伝子の発現が抑制されていると考え、S.cerevisiaeのポリガラクツロナーゼ生産突然変異体を単離した。本研究は、単離されたポリガラクツロナーゼ産生突然変異体の分子遺伝学的解析によりS.cerevisiae内で休止状態にあるポリガラクツロナーゼ遺伝子の発現機構を解明する事を目的とする。本年度は次のような成果を得た。 (1) ポリガラクツロナーゼ発現突然変異体はすでに1株単離されているが、遺伝解析のためにより多くの突然変異体の単離を試みた。アルキル化剤を用いた変異誘導により新たに4株のポリガラクツロナーゼ発現変異体を単離した。変異体の中には温度感受性のものがあり、その培養のため、備品として低温恒温器を購入した。得られた突然変異体と親株のポリガラクツロナーゼ遺伝子を比較したところ、両者は完全に一致した。このことからポリガラクツロナーゼ遺伝子の発現変異はトランスに作用する因子に起こっていることが示唆された。 (2) 得られたポリガラクツロナーゼ生産突然変異体の遺伝解析を行った。申請ではテトラッド顕微鏡を備品として購入するとしたが、交付額が申請額より減額されたためテトラッド顕微鏡の購入が不可能になった。そこで四分子(テトラッド)解析は、大阪市立大学理学部においてテトラッド顕微鏡を借用して行った。その結果、ポリガラクツロナーゼ遺伝子を発現させる変異は、単一の劣性変異に起因することが示唆された。現在この変異を持つ遺伝子のクローニングに着手している。 (3) 休止したポリガラクツロナーゼ遺伝子がS.cerevisiaeだけでなく、その他の酵母菌にも存在するかどうかを検索した。その結果、Kluveromyces属の酵母2種よりポリガラクツロナーゼ遺伝子を単離した。現在その解析と、S,cerevisiaeのものとの比較を行い、ポリガラクツロナーゼ遺伝子発現機構のより詳細な解析を行っている。
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