研究概要 |
1. (1)Oct-1のDNA結合(POU)ドメインに結合する転写仲介因子の候補、PIP2及びそれと相同性を持つbPIP2の全長cDNAを得る為にスクリーニングを行い、それぞれ693アミノ酸及び745アミノ酸からなるORFをえた。(2)PIP2及びbPIP2に対する抗体を作成した。抗PIP2抗体を用いてPIP2は細胞質及び核両方に存在することが示唆された。(3)Oct-1,Oct-2,及びOct-3のPOUドメインとPIP2がin vitroで特異的に直接結合することを示した。更にヒト及びマウスで発現しているPOUドメインを有するすべての蛋白質のPOUドメインをGlutathione S-transferaseとの融合蛋白質として発現するためのベクターを作成した。これらを用いて産生した蛋白質のPIP2及びbPIP2に対する結合特異性を調べる予定である。(4)ノーザンブロットによりPIP2はT細胞やHeLa細胞では発現しているがB細胞では殆ど発現していないことを明らかにした。 2. 研究代表者の属する研究室においてヒトのコラーゲナーゼ遺伝子の発現がOct-1により抑制されていることが明らかにされ(lmai et al.,Mol.Biol.Cell 8:2407,1997)、通常は転写活性化因子として働くOct-1が抑制因子として働く為にはOct-1と相互作用するコリプレッサーが必要だと考えられた。実際、(1)ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害剤トリコスタチンAでOct-1による抑制が外れること、(2)HDAC複合体のサブユニットSMRT及びSin3AがOct-1と強く相互作用することより、HDAC複合体がコリプレッサーとして働いていることを明らかにした。
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