C_1化合物資化性微生物はC_1化合物を資化するために独特なC_1化合物酸化系・資化系を有している。酵母のC_1酸化系酵素については機能と構造に関する研究が報告されているが、細菌ではメタノール脱水素酵素以外での知見はほとんどない。細菌のC_1酸化系に関与する金属非要求性NAD依存型ギ酸脱水素酵素(NAD-FDH)は活性が不安定で、酵素化学的性質および構造が明らかにされているものは、Pseudomonas属細菌由来の酵素のみである。H10年度において、安定なNAD-FDHを有する細菌Hyphomicrobium sp. JC17を土壌より分離し、その酵素化学的性質を明らかにし、ギ酸に対するKm値が極めて小さく、NADH再生系の共役酵素として適する特性を有することを示した。そこでさらに、本菌株のNAD-FDH遺伝子をクローニングして一次構造を明らかにし、大腸菌でのNAD-FDH遺伝子の高発現を試みた。 Hyphomicrobium sp. JC17から単一に精製したNAD-FDHのN末端アミノ酸配列と、細菌・酵母のNAD-FDHの一次構造上で相同性が極めて高い領域のアミノ酸配列から、PCR用プライマーをデザインし、PCR法によってNAD-FDHの遺伝子の一部を増幅させた。この遺伝子断片をプローブとして、遺伝子全領域をクローン化し、塩基配列を明らかにした。一次構造上での相同性は細菌NAD-FDHと約80%、酵母のNAD-FDHと約50%程度であり、活性中心に位置するアミノ酸残基の多くはHyphomicrobium sp.JC17の酵素でも保存されていた。大腸菌内でのNAD-FDH遺伝子の発現をpKK223-3を用いて検討した結果、Hyphomicrobium sp.JC17株よりも約2倍の活性を示す程度まで活性の発現が可能であった。
|