放線菌Rhodococcus sp.N-771は一酸化窒素(NO)生成活性を持ち、ニトリルヒドラターゼ(NHase)をニトル化することにより不活性化し、NHaseに光応答性を付与している。従来NO生産活性としては、アルギニンを基質としたNO合成酵素および亜硝酸イオンを基質とした亜硝酸還元酵素とが知られている。Rhodococcus sp.N-771ではNHaseの不活性化はアルギニンでは促進されず、亜硝酸イオンで促進されることから、本菌体のNO生成系は亜硝酸還元酵素によるものと考えられる。本年度は以下の研究を行なった。これまでに亜硝酸還元酵素としてはシトクロムcdlあるいは銅を中心金属として含むものが単離されており、いずれのタイプもそれぞれ種間でよく保存されている。最近、Streptomyces thioleteusから放線菌としては始めて亜硝酸還元酵素が単離された。この亜硝酸還元酵素は銅型であり、カビ由来のものを一次構造が極めてよく似ていた。そこで、このSthioleteus由来酵素の一次構造を元にプライマーを設計し、Rhodococcussp.N-771ゲノムDNAを用いてPCRを行なったが、適切なサイズのDNA断片は増幅しなかった。さらに、銅の結合部位、種間でよく保存されている部位を元にブライマーを設計し、PCRを行なったが、やはり顕著なDNA断片の増幅は起こらなかった。また、カビ由来酵素のポリクローナル抗体を用いて、Rhodococcus sp.N-771細胞破砕液に対してウェスタンブロッティングを行なったところ、亜硝酸還元酵素と思われるバンドは検出されなかった。以上の結果から、Rhodococcus sp.N-771のNO生成酵素は銅型亜硝酸還元酵素ではないと考えられる。 一方、鉄型亜硝酸還元酵素でよく保存されている領域、および鉄結合部位をもとにプライマーを設計し、Rhodococcus sp.N-771ゲノムDNAに対してPCRを行なったところ、いくつかのDNA断片が増幅した。現在、このDNA断片の解析を行なっている。
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