研究概要 |
クロロゲン酸を高度に含有する植物の葉表面からしばしば分離される葉面着生細菌、Klebsiella oxytocaが生成する4-ヒドロキシケイ皮酸脱炭酸酵素(4-HCD)について、その酵素反応によって生成したスチレン誘導体をガスクロで分析する酵素活性定量法を確立した。これにより、酵素の賭性質および基質親和性を測定することが容易になった。また1の類縁体を広くスクリーニングし、本酵素の基質特異性を検討した結果、E-4-hydroxycionamic acid(1)が最も受容性の高い基質であること、また、受容性に劣るもののcaffeic acid、ferulic acid、E-2,4-dihydroxycinnamic acidがそれぞれ4-HCDの基質となりうることが分かった。これら基質の受容性および被基質の構造から、カルボキシリアーゼ活性を発現するために必要な基質の部分構造として4-位のフェノール性水酸基および8/9-炭素間のE-二重結合部泣が必須であることが分かった。また、4-11CD活性に対する阻害作用を非基質類縁体中に検索した結果、E-4-hydroxy-8-methylcinnamic acidやsinapinic acidに強い競争阻害が認められた。本酵素の反応触媒機構を解明するため、重水置換粗酵素液を調製し、それによって得られた酵素反応生成物についてカルボキシル基に置き換わる重水素の幾何選択性を検討した。脱炭酸反応生成物は[8-DE]-4-hydroxystyreneを選択的に与えた。このE-配向性は、その触媒反応過程におけるパラキノンメチド上での立体選択的なプロトネーションとCO2脱離を強く示唆した。以上のように初年度は、Klebsiella oxytocaが生成する4-HCDの諸性質のうち、基質認識に関わる部分を明らかにすることができた。
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