(1) 未利用動物資源であるパラグアイ産カピバラ油及び馬油の脂肪酸組成はそれぞれリノール酸及びα-リノレン酸が15-20%占めており、P/S比が1.50及び0.70、n-6/n-3比が1.12及び0.27であった。エゾシカ油では飽和脂肪酸の占める割合が45%近くあったが、n-6/n-3比が0.9であった。これらの組成はFAO/WHO及び厚生省が奨励するn-6/n-3比4-10及び4に比べ、ともに低い値を示していた。 (2) ラットへの投与実験の結果、これらの油脂は投与期間を通して魚油、牛脂及びラードと同様に成長阻害は見られなかった。血液中の総コレステロール濃度はカピバラ油で、コレステロール低下作用の強いことで知られている魚油と同程度の効果を示していた。また、悪玉コレステロールとされるLDLコレステロール濃度も魚油と同様に低下していた。エゾシカ油は肝臓においてコレステロール濃度が牛脂及びラードに比べ低下傾向を示し、魚油と同程度の値であった。糞便中へのステロール排泄量はエゾシカ油投与で増加していたが、カピバラ油及び馬油では牛脂及びラード投与と比較して変化は見られなかった。 (3) 各動物油脂を投与したラットの肝臓におけるコレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素及びコレステロール代謝の律速酵素であるcholesterol 7α-hydroxylase活性には大きな差は見られなかった。 ◎ 未利用資源としてのカピバラ油、エゾシカ油及び馬油のラットへのコレステロール代謝を検討した結果、リノール酸19.6%、α-リノレン酸17.9%含むカピバラ油では、EPA、DHAを豊富に含む魚油と同様なコレステロール代謝を示した。また、エゾシカ油についても肝臓でのコレステロールの蓄積が低いことがわかった。以上、上記に示した動物油脂にはラット生体内のコレステロールを低下させる機能がみられた。今後未利用動物・植物油脂のラットのコレステロール代謝に関与するリポタンパク質について、その遺伝子の発現を解析する予定である。
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