研究概要 |
今年度は、エイズ感染時に多発する真菌感染に対する生体防御機構への食品成分の影響を明らかにするための実験系を確立することを目的とし、マウスの真菌感染モデルを用いて絶食および復食の感染防御能に対する影響およびそのメカニズムを検討した。 マウス(BALB/c,雌,7週令)に二形性真菌の一種であるParacoccidioides brasiliensis (Pb)の酵母形細胞(2x10^6/マウス)を尾静脈注射により接種した。絶食は3日間行い,絶食中は飲料水は自由摂取させた。絶食は常に午後1時より開始した。マウス脾臓中の生菌数は,平板寒天培地上での逆培養により測定した。血清中サイトカインはELISA法により測定した。 3日間の絶食により体重は絶食前の75%まで減少したが復食後5-6日後には非絶食対照群と同レベルまで増加した。非絶食群では,脾臓の生菌数は菌接種後増加することなく減少の一途を辿り,血清IFN-γ量は接種4日後にピークを示した。3日間の絶食直後に菌を接種し直ちに復食すると,非絶食群と同様に生菌数は増加することなく減少した。しかし,IFN-γ量は5日後にピークを示した。一方,2日間の絶食直後に菌を接種し,さらに1日絶食を継続した場合は,生菌数が接種3日後まで増加し,感染抵抗性の低下が見られたが,その後減少した。またIFN-γ量は5日後にピークを示した。これらの結果は,感染時に絶食による体力消耗がある場合でも感染直後の復食により体力が回復に向かう場合には感染抵抗性も大きく上昇することを示唆している。菌接種後直ちに3日間絶食すると,脾臓の生菌数が3日後に増加し,感染抵抗性の低下が見られたが,その後減少した。血清IFN-γ量は非絶食群と同様に接種4日後にピークを示したが,非絶食群に比べ有意に増加した。一方,菌接種2日後から3日間絶食すると,生菌数は増加することなく減少した。これらの結果は,感染初期の絶食が感染抵抗性に影響をおよぼすことを示唆している。
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