食品成分の変化を分子レベルで追跡しながら、抗酸化性発現機構を調べることを目的として行った。食品成分の変化は、加工調理と生体内における代謝という二つの観点から実験を進めた。 前年度、ダイコンの煮るという加工調理過程に着目し、XAD-2カラムを用いて分画し、疎水性の低い画分から、抗酸化物質としてトリプトファンの存在を明らかにしてきた。また、今年度はXAD-2カラムからの溶出挙動で、疎水性の強い画分を中心に抗酸化性物質の探索を行った。その結果、疎水性の強い画分に、強い抗酸化性を示す物質が含まれていることを明らかにした。未処理の抽出物との比較から、水を主体とした加工調理では、通常では溶解しない疎水性のものが、熱により溶解し、抽出液中に含まれるようになる可能性を示唆した。 一方、抗酸化物質の代謝を中心に検討するため、前年度、活性物質として得たトリプトファンに着目した。トリプトファンは、容易に吸収され体内に存在すると考えられる。また、トリプトファンは、肝臓に運ばれ、そこで代謝される可能性が考えられる。そこで、肝臓おける酵素による代謝をモデル的に実験する事とした。モデル系としてラット肝臓ミクロソーム由来のS9中でトリプトファンを反応させ、その変化を経時的に追跡した。高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、経時的にトリプトファンと同一保持時間のピークが消失し、抗酸化物質として機能されることが報告されている5-ヒドロキシトリプトファンと同一保持時間のピークが増加した。このことより、トリプトファンは体内で代謝はされるものの、抗酸化物質としてなおも機能する可能性が示唆された。
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