本研究の目的は、グリシニンA3B4のプロ型及び成熟型の立体構造をX線結晶構造解析によって明らかにし、血清コレステロール値低下能を強化したグリシニンを設計することである。今年度は、プログリシニンA3B4のX線結晶構造解析と、胆汁酸結合活性をもつペプチドの導入を試みた。 1.プログリシニンA3B4のX線結晶構造解析 昨年度得られた回折データを用いて、プログリシニンA3B4のX線結晶構造解析を行った。結晶は空間群P_1に属していた。プログラムX-PLORと成熟型グリシニンA3B4のモデルを使って、分子置換法により位相を求めたところ、非結晶単位中に2つの3量体を含むことが明らかとなった。回析データと成熟型グリシニンA3B4のモデルから、プログリシニンA3B4のモデルをR値23%まで精密化した。その結果、プログリシニンA3B4と成熟型グリシニンA3B4の基本構造に大きな差がないことが明らかとなった。 2.サブユニットA3B4への血清コレステロール値低下機能の導入 AlaBlbサブユニットに存在する胆汁酸結合活性をもつペプチドは、A3B4サブユニットにおいても同様にN末端側のバレル中に存在することが確認された。中でも特に疎水性度が高く胆汁酸結合活性に重要であると考えられた部分はストランドHに位置していることが明らかとなった。プロおよび成熟型A3B4のモデルを用いて、胆汁酸結合活性の導入をシュミレーションしたところ、P130A、Y131W、E139Tのすべての変異導入が可能であると判断された。そこで、プログリシニンA3B4サブユニットの大腸菌を用いた発現系を使って、改良A3B4サブユニットの構造形成能の検証を行った。その結果、改良A3B4サブユニットは可溶性画分に回収され、グリシニンの血清コレステロール値低下能の強化が可能であると考えられた。
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