大豆に含まれるタンパク質のうち、アレルギー患者血清と反応する主要なものの一つにβ-コングリシニンのα-サブユニットがある。β-コングリシニンは一次構造の非常に類似した主要な3つのサブユニット(α、α'、β)から構成されているが、これらのうちα-サブユニットが特に強いアレルゲン性を示す。そこで、その差異をもたらす要因の一つとして消化・吸収性の違いについて検討した。研究を進めていく上で、各サブユニットの挙動の追跡等のためには高感度な検出法を確立することが望ましい。そこで、脱脂大豆よりβ-コングリシニンの3つのサブユニットを粗精製し、これらを免疫源としてマウスモノクローナル抗体の作製を試みた。その結果、いくつかの陽性クローンが得られた。しかしながら、これらの抗体では非特異的な吸着や、2つ以上のサブユニットを同時に認識するなど、いずれかのサブユニットに特異的なものは得られなかった。次いで、精製したサブユニットおよびこれらを含む粗7Sグロブリン画分について、胃内消化酵素であるペプシン、膵酵素であるパンクレアチンによる分解への抵抗性に差異があるかどうかin vitro系で検討した。7S画分をペプシン消化すると、β-サブユニットが強い消化抵抗性を示した。一方パンクレアチン消化では全てのサブユニットがほぼ同程度の消化性を示した。すなわち、胃、小腸と連続して消化が進むといずれのサブユニットもペプチドフラグメントヘ分解されると考えられる。さらに、α-サブユニット単独で消化を行うと、いずれの消化酵素においても一過性にいくつかの25K程度の消化断片が蓄積した。今後、消化の中間産物の抗原性や、サブユニットの小腸粘膜通過能を検討し、各サブユニットの性質の違いを明らかにしていく。
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