【目的】これまでに、ヒストン、ポリリジンなどの塩基性タンパク質や塩基性ポリアミノ酸、さらにポリアミン類縁化合物がハイブリドーマやヒト末梢血リンパ球の抗体産生を促進することが明らかになっている。食品成分中にも様々な抗体産生促進因子(IPSF)が見いだされている。ニワトリ卵白に多く含まれているリゾチームも塩基性タンパク質である。そこでリゾチームのIPSF活性について検討した。 【方法】ヒト型ハイブリドーマHB4C5細胞およびヒト末梢血リンパ球を用い、無血清培養下において抗体産生に及ぼすニワトリ卵白リゾチームの影響を検討した。抗体産生促進活性は、培養上清中に分泌された抗体量を酵素抗体法で定量することにより測定した。一方、酵素活性は基質としてM.luteusを用い、530nmにおける濁度減少で測定した。 【結果】リゾチームを120μg/ml以上の濃度で培地中に添加することでHB4C5細胞のIgM産生促進が認められ、380μg/mlの添加濃度において13倍の促進を示した。IPSF活性は培養開始直後から認められ、5日間にわたって継続した。一方、HB4C5細胞の細胞増殖、および生存率にはほとんど影響を示さなかった。また、無血清培養下におけるヒト末梢血リンパ球のIgM産生を5.3倍、IgG産生を2.3倍促進した。100℃、30分の加熱によりリゾチームの酵素活性の90%が消失したものの、IPSF活性は80%以上保持された。また、トリプシン処理の結果、酵素活性は完全に保持されたが、IPSF活性は失われた。このことから、リゾチームのIPSF活性の発現にはその酵素活性の関与はないことが判明した。
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