これまでのスフィンゴミエリン(SPH)食で観察された消化管機能への影響(中性脂肪の蓄積など)がその構成成分であるセラミドに基づくのかコリンリン酸部分に基づくのかそれともSPHそのものの効果であるのかを調べた。食事にスフィンゴ糖脂質(GS)およびホスファチジルコリン(PC)を添加し、消化管機能の諸パラメーターを測定した。それぞれの食事を与えたマウス間での脂肪の見掛けの消化率の差異は大きくはなかったが、GSを摂取したマウスで脂肪の排泄量が少なく、吸収率は最も高い傾向であった。小腸での沈着脂肪量もGS摂取マウスで最も大であった。これらの結果は、SAMPにSPH食を摂取させたときの結果と同様の傾向であった。消化管腔内でのSPHの消化・吸収に関する知見は乏しいが、いくつかの報告はSPHが小腸粘膜酵素の作用で分解を受け吸収されることを示していることから、SPHの消化管機能への影響は、その一方の代謝産物であるホスホコリンではなく、もう一方の代謝産物であるセラミドに基づく可能性が大きい。 摂取したGSやSPHがどのような機構で消化管での脂肪吸収に影響するのかについては本実験からは明らかでないが、SPH摂取マウスでは下部小腸におけるクリプトが深くなることや上部小腸でのスクラーゼ活性が高くなる傾向が認められた。上部小腸のスクラーゼ活性はGS食マウスで高くなる傾向があった。スクラーゼは微絨毛膜の標識酵素のひとつであることから、GSおよびSPHの共通の代謝産物が小腸上皮細胞の機能に影響し、ひいては、脂肪消化産物の吸収を亢進するように作用している可能性があった。
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