動物の大腸内に常在している細菌は、様々な宿主にとって有害・有益な民論をおこなっていることが知られている。今回、脂質代謝や発ガンへの影響が示唆され一次胆汁酸を二次胆汁酸に変換する7α-デヒドロキシラーゼ生産腸内細菌のスクリーニングをおこなった。また、食事成分によって糞中胆汁酸がどのような変動を示すか、食物成分として酒粕粉末と難消化性澱粉を用いてラットとヒトについて検討し、以下の知見を得た。 1. これまで用いられてきたGLCやHPLCに較べ簡単で高感度な抗デオキシコール酸抗体を用いたELISA法を開発し、7α-デヒドロキシラーゼ生産菌のスクリーニングをおこなった結果、これまで報告にない多くの生産菌が見つかった。現在、この分離菌を用いて酵素の性質を調べており、今後、簡便な活性測定条件の確立や本酵素の単離精製の取りかかる予定である。 2. 腸内環境へ影響を与える成分として食物繊維に着目し、ハイアミロースコーンスターチに湿熱処理をおこなった難消化性澱粉と酒粕粉末をラットとヒトに投与して、その消化性・腸内細菌による分解性・代謝産物・腸内細菌叢の構成の変化・胆汁酸の排泄量の変化・胆汁酸組成の変化を検討した。湿熱処理澱粉は、食物繊維含量が70%で大部分が消化吸収されずに盲腸・大腸に達し、常在する腸内細菌によって資化され一部が糞中に排泄されることがわかり、短鎖脂肪酸の生産によりpHが低下、胆汁酸の排泄量が増加し、二次胆汁酸の割合が減少することがわかった。 また、酒粕粉末もラットの糞量を著しく増加し、胆汁酸の排泄量が増加、二次胆汁酸の比率を低下させることがわかった。
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