動物の消化管に常在している細菌は、宿主に有害・有益な代謝を行い宿主の健康に大きな影響を及ぼすことが知られている。本研究では、脂質代謝や発ガンへの影響が示唆されている二次胆汁酸を一次胆汁酸から生成させる腸内細菌由来の酵素7α-デヒドロキシラーゼに関する知見の収集とその代謝制御を目的として研究を行った。 これまで本酵素生産菌としてEubacterium sp. strain VPI 12708などが知られ、比較的菌数の低い強い酵素活性を有する菌が主として生産していると考えられてきた。我々は、これまで胆汁酸分析に一般に用いられてきたTLC、HPLC、GPCより感度が高いELISA法を用いて本酵素生産菌の探索を行った結果、総菌数の1〜10パーセント程度の多くの菌株が低い本酵素生産能を有することを確認した。その中でもEubactrium spと考えられる比較的酵素生産能の高い数菌株を用いて酵素精製を試みたが、継代培養を繰り返すにしたがって生産性が低下し精製することができなかった。 本酵素活性の食品成分による制御を目的として酒粕粉末をラットに投与した結果、胆汁酸排泄量が有意に増加、二次胆汁酸の排泄が減少した。また、コレステロール吸収に重要なコール酸及びデオキシコール酸の排出が増加した。さらにパスタに難消化性澱粉素材である湿熱処理ハイアミロースコーンスターチを添加してヒトヘ投与した結果、胆汁酸排泄の増加とコール酸とケノデオキシコール酸の増加、デオキシコール酸とリトコール酸の減少を示し、食品成分によって胆汁酸排泄と7α-デヒドロキシル化を制御できることがわかった。
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