本年度の研究では、ガス拡散係数および水分特性を測定するために、森林土壌化(団粒化の発達具合)の異なる不攪乱森林土壌サンプルを、共に風化花崗岩を母材とする3地域において採取した。採取場所は、滋賀県南部に位置する、京都大学桐生水文試験地内の60年生ヒノキ林および不動寺境内のヒノキ、コナラを主とする天然林、ならびに中国江西省にある禿山である。土壌水分特性曲線の測定のためには、砂柱法および加圧板法を用いた。そして、これらの手法で含水率が調節されたそれぞれのサンプルについて、ガス拡散係数の測定を行った。測定されたガス拡散係数と気相率の関係は、両対数グラフ上で概ね直線となり、Currieの示した式の適用が可能であることが示された。但し天然林土壌で気相率が小さい範囲では、直線から外れる傾向が見られた。土壌水分特性曲線(圧力水頭と含水率の関係)が森林土壌化の違いにより大きく変化する一方で、ガス拡散係数と気相率の関係はそれほど大きな違いを示さず、CampbellおよびMarshallが提案した係数によって表される直線関係の中間的な特性を持つことがわかった。以上の結果をふまえ、来年度は、今年度に測定を行ったサンプルを水締め充填することによって攪乱サンプルを作成し、二次粒子を破壊した場合のガス拡散係数および水分特性の変化を解析する計画である。また、土壌の透水特性(不飽和透水係数と圧力水頭の関係)の測定も行い、土壌間隙構造の特性とガス拡散係数の関係についても考察を加える予定である。
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