今年度は、被削材にスギ、スプルース、ベイスギを用いて、主に切削エネルギーの大きさについて検討した。結果は以下の通りである。 1. 切削角が25〜30°の範囲では、切削抵抗はほぼ等しかった。これは、全切削エネルギーがその範囲内では等しいことを意味する。 2. 切削エネルギーを摩擦や変形に関与するものに分離した。その結果、切削角が大きくなると、塑性変形に要するエネルギーが大きくなり、摩擦に要するエネルギーは小さくなるなど、各成分は全切削エネルギーが等しい範囲でも変動することがわかった。 3. 樹種による相違を検討したところ、スギとスプルースはほぼ同じ傾向を示したが、ベイスギは他の2樹種に比べ、全切削エネルギー中の摩擦エネルギーの割合が大きかった。これは、ベイスギの強度が小さく、刃物によって大きく変形させられるためと考えられた。 4. 安定的に切削が進行している状態では、全切削エネルギーの変動は小さかった。しかし、各切削エネルギー成分は変動していた。すなわち、切削長とともに、弾性ひずみエネルギーは直線的に増加し、摩擦エネルギーは減少した。なお、塑性エネルギーの変動は小さかった。
|