今年度は、被削材にスギ及びスプルースを用いて、主にプレッシャーバー(以下、バーと略す)の効果について検討した。結果は以下の通りである。 1.前年度に引き続き、切削エネルギーを摩擦や変形に関与するものに分離し、基礎的なデータを収集した。 その結果、バーを設定しなかった場合、切り込み量が大きくなるほど、弾性変形に関するエネルギーは切削角の影響を受けた。一方、摩擦に関するエネルギーは、切り込み量や切削角にはあまり影響されなかった。 バーを設定した場合、摩擦エネルギーと塑性変形に関するエネルギーの和が全体の90%以上となった。なお、両者の大きさを比較した場合、切り屑の抑制が大きくなると思われるバーの設定条件ほど、塑性変形に関するエネルギーの割合が大きい傾向が見られた。 2.切り屑を単板と見なし、バーの効果を単板押し下げ量に相当した力に換算し得ると仮定し、バーが先割れ抑制へ及ぼす影響を理論的に検討した。解析に先立ち、基礎的資料を得るため、バーにかかる力の大きさや向きを測定した。その結果、切り込み量が大きくなると、急激にバーにかかる力が大きくなり、力の向きと切削方向がなす角度が小さくなった。切削過程を簡略化したモデルに、この結果を当てはめ、先割れの進展を予測したところ、比較的良い一致が見られた。
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