研究概要 |
本研究では,森林限界付近に生育する樹木から500年分の標準年輪時系列を構築し,温暖化前後の肥大成長の変動の違いを明らかにするとともに,気象観測が行われていない温暖化以前の月平均気温や月総降水量を年輪年代学的手法により復元することを目的した。8月に北海道大雪山系十勝三股・四国石鎚山系瓶ヶ森の両試験地において現地調査を行ったのち,成長錘コアを十勝のアカエゾマツから120本,瓶ヶ森のウラジロモミから220本採取した。9月〜2月にかけて成長錐コアに含まれる年輪構造上の欠陥などを検出・補正し,実体顕微鏡観察による年輪幅の計測および軟X線デンシトメーターによる年輪内密度変動の計測を行った。その結果,十勝からは510年,瓶ヶ森からは246年の標準年輪時系列を得た。これにより,11年度に継続して年輪構造の画像解析を進めることにより,地球温暖化が顕著になった1850年前後の肥大成長の変動の違いを評価できることが示された。さらに,統計解析を行った結果,今回得た年輪幅・年輪内密度時系列の変動には気温の影響が強く反映されていることが明らかになった。このことから,両試験地における過去200年から500年の気温の変動を復元できることが示された。なお,この成果については,1999年4月に開催される第110回日本林学会大会にて公表する予定である。年輪構造の画像解析に関しては,工夫を施したミクロトームを用い,成長錘試料の表面を高精度で切削する方法を検討した。その結果,解析に十分耐えうるな画像を得るにはさらに試料の包埋処理などの方法にさらに工夫を要することが明らかになった。この点については,各種包埋処理剤を使用した試料処理方法に関する実験をさらに進めているところである。来年度には,今年度得た年輪試料とさらに来年度採取予定の年輪試料とについて年輪構造の画像解析を行う予定である。
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