研究概要 |
本研究では,森林限界付近に生育する樹木から500年分の標準年輪時系列を構築し,温暖化前後の肥大成長や変動の違いを明らかにするとともに,気象観測が行われていない温暖化以前の月平均気温や月総降水量を年輪年代学的手法により復元することを目的した。1998年8月に北海道大雪山系十勝三股・四国石鎚山系瓶ヶ森の両試験地において現地調査を行ったのち,成長錘コアを十勝のアカエゾマツから120本,瓶ヶ森のウラジロモミから220本採取した。年輪幅の計測および軟X線デンシトメーターによる年輪内密度変動の計測の結果,十勝からは510年,瓶ヶ森からは246年の標準年輪時系列を得た。統計解析を行った結果,今回瓶ヶ森から得た得た年輪幅時系列の変動には気温の影響が強く反映されていることが明らかになった。今後さらに,試験地を広げて試料を増やすことにより,過去約300年の気温を復元することができると考えられる。一方,十勝から得た年輪幅・年輪内密度時系列の変動には,気温だけでなく降水量の影響が強く反映されていた。十勝の試料からは,気候復元に使用する重回帰式の説明変数(年輪幅・年輪内密度時系列)が充足していたこことから,過去約500年の帯広の気候を復元することができた。なお,年輪構造の画像解析に関しては,10年度に引き続き,工夫を施したミクロトームを用い,成長錘試料の表面を高精度で切削する方法を検討したが,解析に十分耐えうるな画像を得るにはさらに試料の包埋処理などの方法にさらに工夫を要することが明らかになった。
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