ベニザケGH1遺伝子をメタロチオネインプロモターに接続したベクターOnMTGH1を用いた組み換えサケは著しく成長速度が早まり(約40倍)、頭部や鰓などで形態形成異常が起こることが知られている。また、その成長過程で血中GHも高くなることが判っているが、この著しく成長促進が見られる魚の組織で外来GH遺伝子がどのように発現しているのかを調べることを目的とした。その結果、外来GH遺伝子はほとんど全ての組織(特に脾臓、腸、幽門睡)で発現し、その量は成長の初期の幼魚期にノーザンハイブリダイゼーションで検出できるほど高く、その後検出不可能なほど低下した。しかし、RT-PCRを行うと全ての時期で発現していることが明らかになった。また、この遺伝子組み換えサケの脳下垂体はコントロール魚のそれと比べると約1/3に縮小し、さらに脳下垂体のGH遺伝子発現量も著しく減少することが判った。この研究を通して、実は遺伝子を導入していないコントロールのサケにおいても脳下垂体以外の組織で成長ホルモン遺伝子の発現が見られることが判った。この遺伝子を取り出し塩基配列の解析をしてみると、GH1遺伝子を導入しているサケにおいては少なくともGH2タイプの遺伝子は発現していることが判明した。また、コントロールのサケではGH1タイプの遺伝子も発現していることが最近判ってきたが、その発現量の差に関しては現在調べている最中である。ただ、頭骨形成や鰓に関しての成長異常に関与するsonic hedgehogやHoxD4遺伝子との関係をうまく調べることが出来なかった。
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