研究概要 |
1. 酵素の精製 スルメイカ鰓を5倍量の20mM HEPES buffer、pH7.5-5mM EDTA-10mM 2MEで抽出し、60%飽和硫安塩析、Sephacryl S-300,ヒドロキシアパタイトの各クロマトグラフィーに供して精製した。分子量は約9万でこれまで報告の組織型トランスグルタミナーゼ(TG)と類似していた。 2. 酵素学的特性 酵素活性は、サクシニル化カゼインとMDCを基質としpH-7.5,25゚Cで測定した。 (1) イカ鰓TG活性は0.5MNaCl濃度付近で急激に活性化し、0.8M付近で約10倍となった。また、同濃度のKClでは活性化が小さかった。 (2) 活性発現にはCa^<2+>が必須で、Ba^<2+>,Mg^<2+>,Mn^<2+>,Sr^<2+>には活性発現効果が見られなかった。 (3) MDCおよびサクシニル化カゼインに対するKm値はそれぞれ、0.018mM、1.0mg/mlであった。 (4) 反応至的pHは7.5-8.0付近にあり、25゚C.1時間のincubationではpH8.5-9.0で安定であった。 (5) 0.5M NaCl存在下での熱安定性は25゚C,90minの加熱でも50%程度の活性が残存しており、ホタテTGよりNaClに対して安定であった。 (6) 活性はPCMB,MIA,NEM,Zn^<2+>,Cu^<2+>で強く阻害された。 3 酵素の生体内基質の検索 イカ鰓タンパク質を基質として10mM CaCl_2,0.6MNaCl存在下、25℃でincubateすると経時的に多くのタンパク質にMDCの取り込みが見られた。また、MDC非存在下では反応開始5分でSDS-PAGEゲルに入らない巨大なタンパク質架橋体の形成が見られた。イカ鰓水溶性タンパク質を基質とした場合も同様の架橋体が形成されたことから生体内での反応には水溶性タンパク質の関与も示唆された。
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