1. 研究目的:畜産に典型的にみられる糞尿等の環境負荷要因を明示的に取り入れた生産性の計量分析は、わが国の農業経済学界において、ほとんど試みられていない。本研究の目的は、生産経済学の理論を援用して、糞尿等の環境負荷要因を、処理費用を要する副産物として、生産可能性集合(生産関数)に明示的に導入し、線形計画法で計測可能なモデルを構築すると共に、糞尿などの環境負荷軽減と生産性向上が同時に求められている酪農を対象として、提示したモデルを計測し、環境負荷要因が酪農の生産性に及ぼす影響を計量的に明らかにすることにある。 2. 本年度の成果:分析に先立ち、事実認識として酪農の糞尿処理および本研究の分析方法に関連する内外の研究について、文献サーベイによって整理した。分析方法について、(1)環境負荷要因についての価格データがなくても計測可能で、しかも(2)計測モデルが線形計画法となって目的解が容易に求め得るような分析モデルを用い、北海道の酪農家データを用いて分析を試行した。分析の結果、家畜糞尿を環境要因として考慮しない従来の分析方法による生産性の計測値は、本分析方法の計測値と比べると過大となっていた。 3. 今後の課題:本年度の分析に用いたデータは、特定地域のものであり、今後、農学系大学、農林水産省、試験場等の関係機関におけるデータも分析することによって、さらに実証分析を積み重ね、分析結果の一般化を試みることが今後の課題である。
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