本年度に行った調査・研究の内容は以下のとおりである。 (1) 食糧庁など公的機関が公表しているコメの生産・流通に関する資料を収集、整理し、日本におけるコメ流通の全体像を把握した。 (2) 食糧庁が所管する自主流通米価格形成センター及び民間業者が開設しているコメ市場の価格データを収集、整理し、自主流通米(計画流通)及び計画外流通米の価格動向を比較、検討した。 (3) 新聞・雑誌(一般紙、コメ流通業界誌)等からの情報を収集、整理し、コメ流通業界の動向を把握した。 (4) 首都圏、近畿圏の大手米穀卸売業者のヒアリング調査及び資料の収集を行い、計画外流通米の取扱実態を把握した。 (5) 東北地方のいくつかの農協、役場でコメの集出荷に関するヒアリング調査及び資料の収集を行い、コメ産地段階での計画外流通の実態を把握した。 その結果、以下の点が明らかになった。 (1) 食糧法施行後、コメ流通における計画外流通の割合が大きくなってきており、コメの需給調整にとって無視できない存在になっている。 (2) とりわけ首都圏に近い北関東地方で計画外流通の割合が大きく、東北地方ではまだ低いが、大消費地を抱える宮城県、首都圏に近い福島県では計画外流通が拡大しつつある。 (3) 自主流通米価格の動向と計画外流通米価格の動向は概ね連動しているが、制度上の制約が少ない後者の方の値動きが大きく、業者段階での需給実勢をより反映している。 (4) コメ流通業界内部では、これまで米穀卸売業者が中心であったが、食糧法に基づく業者制度の改定以降、量販店の方に主導権が移りつつあり、それが計画外流通拡大の一要因となっている。 (5) 米価が低迷する中で、大規模農業経営はかえってコメの生産を拡大しており、その事も計画外流通拡大の一要因である。 (6) コメ産地における農協、役場は計画外流通の拡大に対応できておらず、生産者とりわけ大規模農業経営への支援が不十分になっている。
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