本年度に行った調査・研究の内容は以下のとおりである。 (1)東北地方の大規模(10ha以上)稲作生産者へのヒアリング調査を実施し、大規模生産者の計画外流通米出荷の具体的な実態(出荷量、出荷先、価格、その他)を把握した。 (2)東北地方の農協に対するヒアリング調査を実施し、農協の計画外流通米への関わり方の相違を把握した。 (3)新聞・雑誌(一般紙、コメ流通業界誌)等からの情報を収集、整理し、コメ流通業界の動向を把握した。 (4)首都圏、近畿圏、中部圏の大手米穀卸売業者のヒアリング調査及び資料の収集を行い、計画外流通米の取扱実態(数量、価格、その他)を把握した。 その結果、以下の点が明らかになった。 (1)自主流通米の価格が低迷する中で、大規模生産者の多くが計画外流通米の出荷にシフトしており、そのことが米の需給調整に悪影響を及ぼしている。 (2)また、大規模生産者の計画外流通米の出荷は代金回収等のリスクが大きく、必ずしも経営安定につながっているとは言いがたい。 (3)農協はこれまで計画外流通米を敬遠しがちであったが、大規模生産者の農協離れを防ぐ意味から、一部では積極的に計画外流通米を扱っている。しかしながら、大規模生産者の場合と同様、計画外流通米の扱いでは常にリスクを抱えている。 (4)一方、コメ流通業界では、計画外流通米の位置付けが高まっており、一部の業者では自主流通米に取って代わっている。このことは仕入ルートの多様化を意味し、産地に対する優位性を保つ基盤となっている。
|