研究概要 |
今年度は,上記の研究を行うための既存文献の整理を試みた。農家の相続は,戦後民法にとって重要な間題であった。農地改革により生み出された自作農が,均分相続を旨とする戦後民法の制定により,生産基盤を弱めてしまうのではないか,とする議論も強かった。しかし,家督相続の廃止により,長子相続は否定され,農家だけの例外も認められなかった。また,戦後の構造改善は,規模拡大の難しさに直面した。農地は単なる生産資財ではなく,他にも効用を生むものである,と予想される。一方,所有権の移動の点から見ると,多くの農家にとって農地は,自分の子孫に相続することになる。しかも,必ずしも均分相続ではない。では,日本の農家にとって農地の所有はどのような意味があるのだろうか。 日本の一般の高齢者の遺産行動の原因に関する既存の研究では,子孫への配慮としての「遺産動機」よりも自分らの消費と余暇からの効用のためとする「ライフサイクル」的目的に由来する傾向にあることがしばしば指摘されている。来年度の議論は,農家にとって農地を相続することはどのような意味があるのだろうか。このことを農家就業者の高齢者について来年度検証を試みると同時に,戦後民法制定の議論と重ね合わせて考察し,農家の農地に対する考え方及び昨今議論となっている高齢者の農業参加について考察を試みる。また,今後の農家の相続についての考察を行う。
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