今年度は実施計画における農業(者)教育制度、学校教育における職業教育の状況、先進農業国における農業支援制度、農業教育制度については予定通りに研究を進めることができなかった。次年度の重点課題として取り組みたい。 以下、今年度の実績としては (1) 戦後日本農業における農業支援制度に関して、協同農業改良普及事業と農協による営農指導体制の面に着目して、とりわけ占領期におけるGHQ・アメリカの農業支援制度・農業普及制度は日本農業の特質である零細分散錯圃制にも規定され定着できず、そうした中で農業団体再編期において現在の農業指導・営農指導の理論的な基本が形成されたことを明らかにした。また、協同農業改良普及事業との関わりに留意して農協の「営農指導」論の形成から今日にいたるまでの歴史的整理を行うと同時に既存文献に依拠する形で「営農指導」理論が日本農政の変遷の中でどのようにして形成されてきたのか、について整理をした。 (2) また、(1)と同じような観点で、農業先進県(愛知県、長野県、静岡県、鹿児島県、宮崎県、福岡県)における農協の営農指導の推移と今日の現状、および営農指導の課題について、広域合併農協における営農指導体制と自治体農政・行政サイドの農業支援制度に着目して実態調査を行い、(1)のような理論的整理を一般化できない実態が各県にあり、歴史的・理論的な大枠のなかにありながらバリエーションをもって農業先進各県が展開していること、各県ごとの農業構造、主体的条件等に規定されて、農協の営農指導、指導方法、営農指導体制が非常に違ったあゆみを遂げてきていること、当然のことながら農協の営農指導のあり方と協同農業改良普及事業との関わりもバリエーションのあることを明らかにした。現在、そうした状況の整理を歴史的・理論的な大枠のなかに位置づける作業を行っている途中である。 (3)また、広域合併農協が一般化している現状下において、広域合併農協における営農指導体制の現状と「営農センター」の機構上の位置とその機能・役割、および営農指導員の指導内容とその労働実態について、農業改良普及事業との関わりを視野に入れた営農指導員へのアンケート調査を行い、農村・農業場面における広域合併農協の営農指導の現状とその課題について明らかにした。
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