塑性ひずみ制御では、その数学的記述の限界は塑性負荷条件に制約を受けないことを理論的に示した。本手法の最大の特徴は、塑性硬化関数を直接操れることにある。これは材料に対する妥当な構成式が与えられて初めて、塑性特性を生かした全ひずみ制御に発展する可能性を含むことを意味している。本研究の目的は塑性ひずみ制御法の全ひずみ制御法への適用可能性を示し、塑性ひずみ制御特性を生かした水〜土骨格連成解析を有限要素法を用いて行うことである。とくにひずみ軟化域での弾塑性諸ひずみの発現率や土構造物内の間隙分布に与える塑性ひずみ制御特性について数値実験から考察する。 まず塑性ひずみ制御法の全ひずみ制御法への適用可能性を固体解析により吟味した。その結果、塑性制御において得られるひずみ経路および応力経路は、塑性ひずみ制御によって得られるひずみ経路を480等分割した増分形計算から得られる塑性ひずみ経路および応力経路と合致した。つまり、ひずみ制御は塑性ひずみ制御の特性を失わずに解析可能なことが明らかとなった。また、塑性ひずみ制御法の特徴として、ひずみ軟化域での弾塑性諸ひずみの発現率が塑性ひずみ速度に依存することが分かった。 次に同様の塑性ひずみ制御を水〜土骨格速成解析に展開する。ここでひずみ増分幅は各最終ひずみ値を480等分したもので与えた。軸対称問題において要素数75の半断面構造物を設定、境界排水問題を考える。解析の結果、塑性ひずみ制御の特徴が現れるがひずみ硬化・軟化の程度が抑制された。これは固体解析とは違ってダルシー則の効果が付加されたためである。最後にひずみ軟化領域では、間隙比分布は等硬化関数値に対して等間隙比幅に落ち着くものの、間隙比分布は全く異なることが明らかとなった。これは塑性ひずみ速度によって構造物の変形形状が支配されためと結論付けられる。
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