平成10年度に構築した呼吸速度計測システムは、置換ガスとして大気を用いており、大気レベルにおいて温度が青果物の呼吸に及ぼす影響を検討してきた。本年度は、大気レベルだけではなく任意のガス組成条件下での呼吸速度計測ができるようシステムを改良した。改良点は、置換ガスとして窒素、酸素、二酸化炭素の純ガスをマスフローコントローラにより任意に混合したものを用いた。これによって、一定ガス条件下での呼吸速度計測だけでなく、変動を与えた際の応答も計測できるようになった。このシステムを用いて、二酸化炭素濃度が青果物の呼吸に及ぼす影響を検討した。実験条件は、温度30℃、酸素濃度20%一定とし、二酸化炭素濃度についてのみ、0、1、3、5%の4レベルとした。供試材料は植物工場で生産されたリーフレタスで、1回の実験に約400g用いた。収穫されたリーフレタスは5℃で輸送され、翌日実験に供試した。各実験は72時間行い、品質評価のためその前後で質量、水欠差、L-アスコルビン酸含有量を測定した。すべての実験区において、呼吸速度は漸減型を示しており、また呼吸商はほぼ1で一定であった。二酸化炭素濃度0、1、5%区は、二酸化炭素放出速度、酸素吸収速度とも差はみられず、二酸化炭素濃度3%区のみがそれらを下回る結果となった。一般に、二酸化炭素は、呼吸代謝を抑制する場合と促進させる場合がある。抑制する場合は、いわゆるCA貯蔵やMA包装などに利用されている。しかしながら本実験だけでは、どの濃度範囲までが抑制効果となったのか明確ではなく、今後再現性の確認と、さらに高濃度での実験を行う必要がある。また、L-アスコルビン酸含有量はすべての実験区で減少しており、その残存率は二酸化炭素の違いに対して明確な相関はみられなかった。
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