釜炒り茶の炒り葉工程は、生葉の青殺を行う工程で葉の発酵を抑える。現行の炒り葉機では、釜で炒るのみの工を行うため、乾燥の過不足状態が茶葉中に混在する「炒りムラ」が生じ、釜炒り茶の品質を大きく低下させることから、生葉水分を均一に除去するために熟練の技術が必要となる。また、炒り葉工程における加工精度の評価は、製茶後の官能審査によって行われるため、迅速、かつ、定量的な評価方法の開発が急務である。そこで、本研究では、「揉みの作用」によって均一な乾燥を行う「円すい型連続式炒り葉機」の設計・製作、および、炒り葉機の加工精度を定量的に示す「炒り葉評価システム」の実用化を検討し、炒り葉工程の改善を行うものである。 本年度は、円すい型連続式炒り葉機を設計するための基礎資料を得た。すなわち、上下に位置する2つの円すい釜の間隙の大きさ、その間隙に投入される適正な生葉量、円すい釜側面の形状、および円すい釜の回転速度から生葉の均一乾燥、および揉捻による針状成形の程度等の基礎資料を取得できる回分式平釜炒り葉機を試作した。加工精度の評価は、現在、開発中の炒り葉評価システムにおける評価指標の抽出を行った。以下に回分式平釜炒り葉機、および、炒り葉評価システムを用いた性能試験、および、解析結果を示す。 1) 回分式平釜炒り葉機は、高さ・揉圧の調節が可能な固定式平蓋とニクロムコンロで加熱される回転式平釜との間隙に生葉が投入され、平釜の回転によって生葉と平釜・平蓋との間に摩擦が生じ、生葉が揉まれる構造を有する。本機の温度調節は、平蓋、平釜の温度が2つの非接触式温度計で計測される構造としたことから、平釜の温度を基準にしてニクロムコンロの電圧がスライダックで調節されるようにした。 2) 3番茶期の「やぶきた」を供試した性能試験の結果、(1)平釜底120〜140℃前後、間隙1〜2mmの時に乾燥、および、揉みの状態、香気が良好であったこと、(2)揉みによるある程度の形状変化が観察されたものの、改善が必要であること、(3)生葉の投入量の変化によって処理葉の性状が変化したこと、等が明らかとなった。 3) 炒り葉評価システムでは、生葉から過度にまで処理した炒り葉のRGB画像をコンピュータで解析し、B(青)の面積割合(最適減水率時の葉色分布が、処理葉全体に占める割合)が、最も炒り葉工程を評価する指標として有効であることを明らかにした。 以上の結果を踏まえ、来年度は、円すい型連続式炒り葉機の設計・製作、炒り葉評価システムの現場での適用、今年度データの充実等を行う。
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