本年度は、まず、数%オーダーのCO_2ガス(以下、超高濃度CO_2ガス)による気孔開孔の現象を確認することを目的に、ガス組成の変動に対する気孔の応答を非破壊的に観察するためのシステムを開発した。このシステムでは、植物の葉を切り取られていない状態で長焦点距離型の落射顕微鏡のステージ上に固定し、ガス濃度を制御した空気を葉に吹き付けながら、気孔開度の変化を測定する。気孔開度は、落射顕微鏡からのビデオ映像を画像解析することにより求めた。実際に超高濃度CO_2ガスの影響を調べる実験では、実験材料にバレイショの幼苗を用い、他の環境要因の影響を最小限に抑えるために、システム全体を温湿度が制御された室内に設置し、観察対象の葉に照射される光の強度を栽培環境と同じになるように調節した。さらに、超高濃度CO_2の影響を調べる前に、室内の空気を葉に吹き付け、気孔開度が変化しないことを確認した後、温湿度調節した超高濃度CO_2ガスを吹き付け、気孔開度の変化を測定した。この結果、25mmol/molのCO_2を15-30min程度吹き付けることで、バイレイショの気孔が開孔することが確認できた。この際、葉の表面の方が裏面より超高濃度CO_2による開孔の度合いが大きかった。次に、生細胞で使用可能なpH感受性蛍光プローブを用いて、超高濃度CO_2ガス環境下で気孔開度が変化していく過程における孔辺細胞内のpH変化を調べるために、蛍光プローブの導入法を検討した。蛍光プローブにはSNARF1/AMおよびSNARF1-dextranを用いた。その結果、切り取った葉片をSNARF1/AM溶液に漬けることで、比較的強い蛍光が孔辺細胞の気孔腔側において認められ、H^+透過担体negericinによるin vivoキャリブレーションも可能であった。
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