研究概要 |
寒地型イネ科牧草(イタリアンライグラス),寒地型マメ科牧草(アルファルファ)および暖地型イネ科牧草(ローズグラスおよびギニアグラス)を用い,細胞壁分解酵素の添加がサイレージの発酵特性ならびにルーメン内消化動態に及ぼす影響について検討した.各牧草を予乾した後,酵素を50mg/kgの割合で添加してサイレージを調製した.45日間嫌気的に貯蔵した後,凍結乾燥試料をヤギのルーメン内でin situ培養して細胞壁成分の消化動態を測定した.得られた結果は以下のとおりである. サイレージの貯蔵性は細胞壁分解酵素の使用によって向上したが,その程度は牧草種によって異なり,寒地型イネ科牧草に比べマメ科牧草および暖地型牧草で改善効果が大きかった.暖地型牧草サイレージでは,酸素を添加しなくても貯蔵日数の延長にともなって細胞壁成分が減少する傾向が認められ,サイレージ発酵の基質として細胞壁成分が利用されていることが示唆された.ルーメン内における細胞壁成分の消化速度はマメ科牧草サイレージが大きな値を示したが,酵素を添加するとその値は有意に低下した.この酵素添加にともなう消化速度の低下はイネ科牧草サイレージでは認められず,細胞壁成分の潜在的な消化・分解性はイネ料牧草とマメ科牧草では大きく異なることが示された.暖地型牧草サイレージでは,貯蔵中にその一部が分解されたにも係わらず消化速度が低下しなかったことから,乾草よりもサイレージ化する方が飼料全体の利用性を高めるうえで有利と考えられた.
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