本研究は、家禽の換羽を制御するホルモン機構について、実用的な測定方法がないためにこれまで全く解明されていなかった甲状腺刺激ホルモン(TSH)の関与に関して重点的に検討し、併せて他のホルモンとの相互作用についても明らかにしようとするものであり、研究手法としては主に生化学的手法を用いることとした。 本年度においては、まず、RT-PCR法を利用してTSHのmRNAの特異的定量法を確立し、平成11年度の研究計画を一部前倒しして、強制換羽を行ったニワトリの下垂体試料を用いて定量を行った。その結果、mRNA量が換羽の期間中に大きく変動するという結果を得た(投稿準備中)。次に、TSHβサブユニットのcDNA配列から予測したアミノ酸並列に基づいて合成ペプチドを設計し、これに対する抗体を作製した。この抗体を免疫組織化学およびウェスタンブロットに利用し、下垂体中のTSHβサブユニットを検出することができた(文献1)。さらに、この抗体を用いて時間分解蛍光イムノアッセイ法による血液中のTSH量の測定の検討を行った。その結果、この抗体とTSHのαサブユニットに対する抗体を併用すると高感度な定量が可能になることがわかったため、さらに検討を行っている。 また、TSH以外のホルモンの強制換羽に伴う変動に関しては、ステロイドホルモンを含めて8種類のホルモンを同一の試料から測定し、それぞれ興味深い変動を示す結果を得た(投稿準備中)。さらに、本研究の応用面である自然換羽の解析に関連して、就巣性のある数種類のニワトリの血液から抽出した核DNAを試料として、TSHのαとβサブユニットのcCNAをプローブとして用いた制限酵素断片長の多型解析を行ったところ、ニワトリの品種間におけるバンドパターンの変異が明らかとなった(投稿準備中)。
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