一連の研究となる平成10年度の研究の結果、プロラクチンにより誘導される遺伝子のひとつはプロタミン2 mRNAであることが明らかとなり、またSKD3cDNAの全長と新規転写調節因子cDNA断片のクローニングに成功した。本年度の研究では、まずプロラクチンによるSKD3および新規転写調節因子mRNAの誘導について確認を行った。残念なことに、これら二つのmRNAはプロラクチンによって制御を受けていないらしいことが明らかとなった。しかし、SKD3および新規転写調節因子に対する情報が極めて少ないことからSKD3において抗体を作製し、western blottingおよび免疫組織化学を行って、タンパク質レベルでの発現を検討した。また、新規転写調節因子のほうは、精巣におけるmRNAの発現と局在を検討し、cDNAの全長のクローニングを行うとともにtargeting mouse作製のためにゲノムDNAのクローニングを行った。 結果、SKD3については予想される76kDaおよび90kDa付近に強い免疫反応が認められた。免疫組織化学の結果、SKD3はセルトリ細胞およびライディッヒ細胞に局在することが明らかとなった。In situhybridizationの結果と一致しないのは生殖細胞における局在が観察されなかったことである。特にライディッヒ細胞における局在が特徴的であった。つまり、ライディッヒ細胞細胞質全体に分布している細胞から核膜周囲に強く局在する細胞まで様々な様相を示した。SKD3は熱ショックタンパク質104に属するタンパク質であり、分子シャペロンとしての機能が想定されている。以上のことからSKD3はライディッヒ細胞において、分子の核膜通過をサポートする分子である可能性が考えられた。 新規転写調節因子のクローニングでは、cDNAおよびゲノムDNAともにクローンを得ることができた。
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