研究概要 |
我々は造血系サイトカインとして知られているInterleukin 3(IL-3)が、交感神経節に作用し、軸索伸展効果をあらわすことを見いだした(Kannan,et al.,1996)。そこで、IL-3の神経再生における役割を検討するために、まずIL-3が交感神経節ニューロンに直接作用するかどうかをin vitroにおいてより詳細に調べた。すなわち、新生マウスの上頚部神経節より分離し培養したニューロンに対してIL-3は、分化促進、生存維持効果を示した。また、神経表面にIL-3レセプターの発現が認められ、さらにIL-3の効果がMitogen-activatedprotein(MAP)kinase活性を介しておきることが明かとなった(投稿中)。 そこで、in vivoでの交感神経再生におけるIL-3の役割について現在検討中である。脾臓は交感神経支配が強く、神経終末が血管周囲のみならず実質のTリンパ球領域に多く分布し、直接リンパ球と接している。6-hydroxydopamine(60HDA)をマウスに腹腔内投与すると脾臓などいくつかの臓器で交感神経が特異的に破壊されるが、脾臓交感神経はマウスでは1カ月以内にほぼ完全に再生される。現在までにノーマルマウスを用いて、60HDA投与後の脾臓切片を作成し、アドレナージック神経のマーカーであるTyrosinehydroxylaseによる免疫染色法を試み、評価の再現性を確認した。IL-3は主に活性化Tリンパ球より放出されることから、今後、免疫賦活化したマウスの脾臓における60HDA投与後の神経損傷/再生過程を経時的に調べ、その変化に対するIL-3の役割をIL-3/IL-3Rβc double knockoutマウスを用いて調べる。 交感神経以外の末梢神経再生に対すIL-3の役割についても検討するために現在、坐骨神経切断実験の手技及び評価法の確立に努めている。
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