自然発症の突然変異精巣形成不全症ラットの病因遺伝子(hgn)は、ラット第10染色体上に存在し、D10Mit2と完全連鎖することが、48個体のバッククロスを用いた多型解析で既に明らかにされている。本研究では、hgn遺伝子座周辺の詳細なマップ作成し、ラット第10染色体と相同なマウス第11染色体にマップされた既存の遺伝子の中から候補遺伝子を見いだすか、あるいはポジショナルクローニングに向けて詳細なマップを作成することを目的としている。計画では平成10年度に約100匹の戻し交配仔を生産し、平成11年度に総数約150匹について、マッピングを行う予定であった。しかし、教室に蓄積されたノウハウが効率よく作業に反映されたため、予定より短期間で上記の目的が達成がされた。現在までに、総計166個体の戻し交配仔について、多型解析を終了させている。この結果、hgn遺伝子は、D10Mit2以外に、NOS2(NO合成酵素)のイントロン部分に由来するマーカーを含む8個のマイクロサテライトマーカーと、166個体で完全に連鎖してた。さらに、hgn遺伝子座周辺のラットとマウスで共用できるマーカーを見いだすことに成功し、hgn遺伝子座がマウスD11Mit364(44cM)とD11Mit365(46cM)の間に存在することが判明した。しかし、現在の所マウス第11染色体の44〜46GcM内にマップされた既存の遺伝子の中に、有力な候補は見あたらない。平成11年度には、ラット戻し交配仔の個体数を増やして、hgn遺伝子座と完全連鎖するマーカーとの位置関係を明らかにし、ポジショナルクローニングに向けての準備を進めると共に、マウスのバッククロスあるいはRHパネルを用いてhgn遺伝子のマウス上での位置をさらに絞り込み、マウスや人のEST検索から、ポジショナルキャンディデート法での病因遺伝子同定も試行するつもりである。
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