自然発症の突然変異精巣形成不全症ラットの病因遺伝子(hgn)は、ラット第10染色体上に存在しており、本研究では、hgn遺伝子座周辺の詳細なマップ作成し、ラット第10染色体と相同なマウス第11染色体にマップされた既存の遺伝子の中から候補遺伝子を見いだすか、あるいはポジショナルクロ一二ングに向けて準備をすることであった。実験は当初の計画より進展が早く、本年度までに384個体のバッククロスを作製し、マイクロサテライトでのタイピングにより、hgn遺伝子座をD10Rat68からD10Rat159の1.4cMの範囲に絞り込むことに成功した。また、マウスバッククロスを用いることにより、hgn遺伝子座がマウス第11番染色体上のおよそ44〜46cMの間に存在することを明らかにした。さらに、ラットおよびマウスのRadiation hybrid panelを用いることにより、hgn遺伝子座と完全連鎖する複数のマイクロサテライトを配列した。現在までにhgnの有カな候補遺伝子は見出されていないが、当初の予定通り、ポジショナルクロ一ニングに向けての準備は本年度までにほぼ完了したと言える。また、本研究で蓄積したノウハウを用いて、hgnと同様に常染色体性単純劣性で遺伝し、全身性皮下水腫を呈して出生直後に死亡する骨軟骨形成不全症ラットの原因遺伝子(ocd)をラット第11番染色体上にマップすることに成功した。また、優性遺伝を呈する無毛症ラットの原因遺伝子(Ht)は、hgnの極近傍にマップされ、この領域で同定されているnudeの原因遺伝子(whn)との関連は興味深い課題となった。
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