(1) oval cellの動態:6週齢、雄のミニラットに1000mg/kgのガラクトサミンを1週間に1回、最高4回まで腹腔内投与して肝障害を惹起した。初回投与から1、2、3、5、7日後、および2、3、4週後に肝を採取し、検索を行なった。初回投与の3日後よりグリソン鞘と周囲実質との移行部に小型卵円形細胞が出現し、7日後には肝小葉内で小塊状、微細管腔状の構造を形成して増殖していた。この細胞の増殖は初回投与2週後以降には肝小葉内にび漫性に拡大し、微細管腔構造状の増殖が主体となった。免疫染色では、これら小型細胞のほとんどが胎児性肝細胞のマーカーであるαフェトプロテインと胆管上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン7の両方に陽性を示したが、αフェトプロテインに対する染色性は次第に減少し、初回投与の4週後にはほとんど全ての小型細胞はサイトケラチン7にのみ陽性を示した。このように、ミニラットの肝ではガラクトサミンの初回投与7日後においてもoval cellの増殖が明瞭に観察され、増殖oval cellは胆管上皮細胞へ分化することが示された。 (2) 細胞外基質の動態:oval cellの増殖と分化に関与すると考えられている細胞外基質の動態に関して上記の実験系で検索を行なった。その結果、oval cellの出現前には類洞壁に沿ってラミニンとフィブロネクチンの沈着が観察された。oval cellが出現するとその周囲にまずヘパラン硫酸プロテオグリカンの沈着が見られ、その後、ラミニン、フィブロネクチン、IV型コラーゲンの沈着が観察された。ガラクトサミン初回投与の4週後では類洞壁沿いの沈着は消失し、oval cell周囲ではフィブロネクチンが消失してラミニンとIV型コラーゲンだけが沈着していた。これらの細胞外基質は直接的および間接的にoval cellの増殖および分化の調節に関与していることが推察された。
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