(1) 多種のイネ品種のUVB抵抗性とUVB誘導DNA損傷(CPD)の修復能力との関係およびその遺伝的背景について これまでに選抜したインド型イネ品種、Marich-bati(抵抗性)とSurjamkhi(感受性)を材料に、CPDの修復能力と紫外線感受性との関係について検討した。その結果、両品種間においてUVBによるCPD生成の感受性を比較したところ差異は認められなかった。しかし、生成したCPDを修復する光修復速度は明らかに、抵抗性品種Marich-batiの方が感受性のSurjamkhiよりも速く、これまでに我々が報告した日本型イネ品種ササニシキ(抵抗性)と農林1号(感受性)での結果と同様の結果を得た。これの結果は、紫外線抵抗性とCPDの光修復能力がより密接な関係にあることを示唆している。そこで、次にUVB抵抗性とUVB誘導CPDの修復能力との関係についての遺伝的背景について検討する目的のため、ササニシキ(抵抗性)X Surjamkhi(感受性)、および農林1号(感受性)X Marich-bati(抵抗性)の交配を行いF1個体を得た。現在、交雑後代F2を栽培中である。 (2) UVB感受性品種農林1号における、光修復能力の低下の要因について ササニシキおよび農林1号の光修復酵素を含む粗液と、一定量のCPDを有するλDNA(基質)を用いて、それぞれの品種の粗液中での光修復酵素活性の特性について検討を行った。その結果、(1)基質であるCPDと結合し、基質-酵素複合体の形成に要する時間は、農林1号の方がササニシキと比較して長いこと、(2)基質-酵素複合体の温度に対する安定性について比較したところ、農林1号は45℃以上で活性が低下するのに対し、ササニシキは45℃では安定で、60℃で活性の低下が認められた。以上の結果から、農林1号の光修復酵素は構造上に変異があることにより、その能力が低下している可能性が示唆された。
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