初年度は、衛星細胞がヘパサイトグロースファクター(HGF)を自ら合成しているかどうかを調べた。得られた成果の概要は以下の通りである。1)ラットHGFの塩基配列に基づきプライマーを作製しRT-PCR法によりHGFのmRNAの発現を調べたところ、培養時間の経過に伴い発現量は増加し42時間目にほぼ最大になることが分った。2)衛星細胞および培養上清を抗HGF抗体を用いたECL-Western Blottingに供試したところ分子量約9万および6万の位置に強い反応が認められ、衛星細胞がHGFを合成・分泌していることがタンパク質レベルでも確認された。またHGFの合成量は培養48時間目にほぼ最大となり、これは先のmRNAの発現量の変化と良く対応していた。3)衛星細胞が合成・分泌したHGFに衛星細胞を活性化する生理活性があるかどうかを抗HGF抗体を用いた中和実験により調べた。即ち、充分量の抗HGF抗体を添加した培養液を用いて衛星細胞を培養し、活性化に及ぼす抗HGF抗体の影響を追究した。抗HGF抗体を添加していない対照区においては培養42時間目以降に活性化率が急激に増加したのに対して、抗HGF抗体添加区では活性化率は低く推移したことから、衛星細胞が分泌したHGFは生理活性を有していることが確認された。以上の結果は、衛星細胞はHGFを自ら合成・分泌することを示しており、autocrineによって活性化を誘起するものと考えられた。また、HGFの合成がまだ盛んでない培養初期の衛星細胞において、細胞膜周辺に既に多量のHGFが存在していることを間接蛍光抗体法により観察しており、分泌されたHGFが細胞膜や細胞外マトリックスに結合・貯蔵されている可能性が示唆された。
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