研究概要 |
昨年度までの本研究で、マウス胸腺マクロファージにはフェノタイプ・形態・貪食能の差等から、大別して3種の亜群が存在することがわかった。大型で細胞突起に富みMac-2,F4/80,CD32/16を共に発現しているDendriticタイプ、比較的小型で細胞突起に乏しく、Mac-2ポジティブ、F4/80,CD32/16ネガティブであるRound タイプ、少数だが被膜直下にあって被膜下に細胞突起を伸ばすF4/80,CD32/16ポジティブ、Mac-2ネガティブであるFlatタイプ、である。本年度は、数的にほとんどを占めるDendritic,Roundの両タイプについて、貪食関連マーカーの検索を行った。クラスAスカベンジャーレセプター(2F8)及びCD14がDendriticタイプに発現しているが、Roundタイプには見られないことがわかった。次に他の抗原提示細胞との関連を検討するため、樹状細胞マーカーの検索を行った。樹状細胞に広く発現が認められ、interdigitating cell(IDC)での発現も報告されているCD11cは、Dendriticタイプでは微弱な発現が認められるのに対し、Roundタイプでは免疫電顕によっても発現は認められなかった。また、免疫電顕ではIDCの形態的特徴を示す細胞にCD11cの発現が観察された。結論として、Dendriticタイプが胸腺内における典型的なマクロファージと考えられるのに対し、Roundタイプは細胞の形態、フェノタイプ、貪食という機能のいずれの点でもこれとは異なることが示された。現在両タイプの移行型と考えられる細胞は見つかっておらず、Roundタイプはこれまで報告されていないマクロファージ亜群と考えられる。このタイプの細胞の機能や分化について今後さらに解析を進めたい。
|