我々が作成したrae28遺伝子欠損マウスは、ファロー四徴症など心臓流出路を中心とした先天性心疾患や系統的な神経提細胞の発生異常を示し、ヒトのCATCH22症候群において観られる病態の全てを兼ねそろえている。本研究では、このマウスを解析することにより、心臓発生及び先天性心疾患の発症に至る分子機構を解明することを目的としている。現在までに以下の研究成果が得られている。(1)新生仔期のrae28遺伝子欠損マウスにおいて観察された、肺動脈狭窄、心室中隔欠損等を含む心臓発生異常は胎令13.5日には既に生じており、また、胎令10.5日には心臓のルーピング異常を示す個体が認められた。これらの発生異常はニワトリにおいて神経提細胞の除去実験で高頻度に出現する異常と良く似ていた。(2)α-cardiac actin、Ca^<2+>-ATPaSe、MHC-αといった心筋の発生、機能に重要な働きをする遺伝子の発現は、rae28遺伝子欠損マウスと野生型マウスを比較して変化が認められなかった。(3)発生中のrae28遺伝子欠損マウスにおいて、側板中胚葉に観られるHoxa3、a4、a5、b3、b4遺伝子の発現境界が顎の方向に変化していた。(4)頭部神経提細胞の起源と考えられるロンボメアーにおいて、Hoxb3、b4遺伝子の異所的発現がrae28遺伝子欠損マウスで生じていた。以上の遺伝子の発現異常が、rae28遺伝子欠損マウスで観察されたCATCH22症候群様の病態を引き起こすと我々は推察している。
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